龍が如く


最近はDSばっかだったので、なんとなくPS2のゲームがやりたくなり、ふらふらと近所のゲーム屋へ。財布と相談した結果、廉価になっていた「龍が如く」を買ってみた。評判になっていた気がするし。


セガサミーになってから、腑抜けになったと思ってたけど、こんなセガらしいゲームが出るなんて、捨てたもんじゃない!80年代のセガは、近未来SFへの憧憬が魅力だった。90年代は都市型ゲーム志向が格好良く見えた。龍が如くは90年代の系譜に位置づけすべき作品で、新宿を忠実に模した街とヤクザ/アンダーグラウンドカルチャーに立脚している。ヤクザカルチャーと言っても、馳星周の書く空想的なもので、ネタ的な側面が強い。三池崇史が監督した馳原作の「漂流街」という映画があったが、まさに、あの世界がゲームになっている。


都市を練り歩いて、イベントをこなしたり、住人に暴行を加えるというスタンスのゲームでは、GTAがまず思い浮かぶ。(GTAほど無軌道ではないけれど)GTAをやってものめり込めなかったのは、街の虚構性を受容できなかったからだと思う。遊園地的な空間であり、多様な機能が密集している。遊園地というのは、人造人間的で、グロテスクだ。生活のリアリティは去勢されている。


龍が如くの優れている所は、生活感や空気を如実に描写している点にある。新宿は、朝の5時くらいが印象的な街だ。寂れたような表情と清々しい空気。歓楽街と都市の機能が入れ替わり始める時間。機能性の移行がゲーム内に感じられる。それが、画面から伝わってきたのに驚いた。遊園地と呼ぶにはあまりに猥雑で、未整理な都市感が好ましい。


もう一つ、面白かったのは、実際の企業とコラボレーション(?)していることだ。ドンキホーテが、街の片隅にしっかりと存在する。店に入ると、例のテーマ曲が聴こえてくる。非常に日本的ともいえる、多層縦断的な店内の装飾も忠実に再現している。飲み物も、アミノサプリや伊右エ門など実際にあるものが、コンビニで買える。大型ビジョンには、本物のCMが流されている。こういった、リアリティの破片を持った小道具が、このゲームの肌触りを不思議なものにしている。


全体として、ゲームをしているというよりも、ドラマに参加している感じがする。ムービーが多いゲームは嫌いなのだけど、龍が如くに関しては、意外にすんなりと受け入れられた。それは、既視感のある街に対して、感覚がフィジカルに共鳴してるからだろう。