最近よく聴くCD

Urlicht2007-01-02



山田耕筰長唄交響曲「鶴亀」[Naxos]を手に入れてから、何度も聴いている。おれみたいな長唄(というよりも邦楽)初心者には親しみやすくて丁度良い。それはオーケストレーションの巧みさによるところが大きいのだろう。曲の展開に合わせて、理解を助けるように弦楽群が伴奏してくれるので、歌詞を知らずともなんとなく盛り上がりはわかる。西洋音楽的な和声進行の方が自然に受け入れられるというのもなんだか悲しいけれど。


この鶴亀やいくつかの雅楽の録音を聴く限りでは、その音楽はガムラン音楽に近い様に感じる。三味線の打拍の感覚なんて直接的かつ、身体的である。曲自体の構成も非常に考えられている。エロティックですらある。


長唄にただオケをかぶせただけじゃん、なんて話もきく。実際にその通りである。ただ、山田は軽い気持ちでそのまま長唄を下敷きにした訳ではないと思う。ゼロからそれを作り出す困難さ、先駆者への尊敬から生まれる謙虚さから、そのまま長唄を用いることを選んだのだろう。その真摯さが心を打つし、だからこそこの挑戦は実を結んだんじゃなかろうか。


これは別のところにも書いたのだれど、演奏と録音がすばらしい!東音宮田哲男と東音味見亨は凄みがある。長唄を知らずとも、表現の水準の高さを感じることはできる。都響も破綻のない好サポートをしているし、湯浅卓雄も実にしっかりとした解釈を聴かせる。EXTONレーベルの江尻氏が出張録音をしているみたいだが、これはいい仕事をしたと胸を張っていいだろう。長唄管弦楽の分離の良さはこの曲の録音のキモ。