ラトル4枚目のシマノフスキ(歌曲集)


バーミンガム市響とのスタジオ録音[EMI]。これはいいよ。特に「ハルナシェ」はラトルのベストレコーディングに数えてもいい。第2場のツェピーネからが圧巻。バーミンガム市響合唱団が抜群に上手い。ソリストのロビンソンも表情の付け方が巧みで、強奏指示でも叫ばず、丹念に歌っている。声量もある。バレエ(パントマイム)音楽で、次々と情景が移り変わっていくけれど、ラトルは手練手管を見せず、鮮やかに処理していく。バーミンガム市響の技術水準も驚くほど高い。だからこそ、ここまでさらりと演奏できたのだろう。ラトルは、はじけ飛ぶ打楽器の色彩を生かすのが上手で、舞曲的なこの曲と適合度が高い。打楽器出身の指揮者だけはある。この人にとって、ショスタコーヴィチガーシュインに匹敵する得意レパートリーが、シマノフスキだろう。EMIにしては、非常にクリアで優れた音質。そういえば、ラトルとボストリッジブリテンも録音がよかったな。ただ、エピローグで、ロビンソンの声が遠くなる(別録りかマイクの位置がずれたのだろう)のが残念だ。


ラトルとBPOのCDは予算の関係のせいか、そのほとんどがライブ録音である。結果として、細部はどうしても荒くなってしまうし、直せない部分も出てくる。このシマノフスキは、BPOでなくCBSOを登用しているが、スタジオ録音だ。そこが大きい。ラトルはライブで爆発的な演奏をするタイプではないだけに、落ち着いて曲を俯瞰できるスタジオ録音の方が向いているのだろう。サラ・チャンとのショスタコーヴィチ・ヴァイオリン協奏曲1番のような悲惨なCDを作るくらいならじっくりとスタジオ録音をすべきだ。