バビ・ヤール


サンクトペテルブルグフィルとテミルカーノフの来日公演に行ってきた。サントリーホール
プログラムは最高で、


わけあってリハーサルから観てたんだけど、複雑な心境でした。前任者と比較するのはナンセンスだと思いつつも、考えてしまう。とりあえず、曲を流して、部分的に修正していく。いたって一般的なリハーサル。かなりの割合が通し演奏で、相対的に細部は疎かになる。ディティールを描き込むというより、修正に終始していて、詰めが甘い様に感じた。テミルカーノフに解釈とか求めては行けないんだろうけど。


さて、本番。協奏曲は眠くなるような退屈な演奏だった。レーピンのヴァイオリンは切れ味が鋭く、この曲によく見られる様な大味な演奏とは違ったけれど、理解の浅さも同時に感じさせた。カデンツァの寂しさは、私の心には残っていない。


パッサカリアは演奏者の姿勢を図るのに持ってこいだ。冒頭の和音に注目すればいい。フレージングを際立たせるタイプと、流すタイプの指揮者にわかれる。ロシアの演奏家はだいたいつなげて、大地が揺籃するみたいに解釈するのが一般的みたい。テミルカーノフもこのタイプに属する。つなげるのが悪いわけではないけれど、これをすると、ヴァイオリンの独奏に音が被りやすくなる。オイストラフみたいに音が太いと埋没することもないけれど、レーピンやムローヴァの様なソリストに相応しいかは疑問。レーピンはリズミカルに弾く。それだけに、鈍い伴奏と齟齬を起こしているのがわかって、眠くなる。もったいない。


「バビ・ヤール」は前半よりはマシだった。やっぱり、ショスタコーヴィチは実演で聴いた方がいい。シロフォンチェレスタの様な、体鳴楽器が録音だと聴き取りにくいからだ。合唱は東京オペラシンガーズだったが、健闘していたと思う。複雑な表情を持ってる曲だけに、しっかり内容を知っていないと、身体性をすぐに失う。そういった意味では、説得力があった。


オケは、さすがに合奏力があって、力強い。メンバーもやる気を見せていたのは嬉しかったけれど、曲が曲だけに、やる気だけではしょうがない。聴かせどころが散開しているから、巧みに整理する手腕がないと、音が渋滞しだす。そういうことをリハですべきなのに・・・余計なお世話か?


レイフェルクスは、ひどいね。声に力がないし、なによりも細部は完全無視の化石みたいな歌唱。こんなのに拍手しなくていいと思う。


13番が実演で聴けるだけでも価値があるけれど、それ以上の意味はなかったな。